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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
「…笙子さん…」
笙子のわずかに震える白い手に、岩倉の大きな温かい手が重なる。
「…ありがとう…。私に触れてくれて…」
慈しむように握りしめられ、再び甘く優しい口づけを与えられる。
岩倉の瞳に光るものがあった。
「…千紘さん…私の方こそ…」
涙が溢れ…言葉にならない。
自分が傷付いている以上に、岩倉も傷付き悩んでいたのだ。
医師である立場が彼を苦しめていたはずだ。
自分だけが被害者のように、心が凝り固まっていた。
悪夢の記憶に囚われすぎて、大切なものを見失いそうになっていた。

…けれど、今は違う。

「…私を…受け入れていただけますか?」
改めて抱きしめられ、耳元に囁かれる。
「…はい。…私を…千紘さんのものにしてください…」
…こんなに幸せな気持ちで、抱き合えるとは思っても見なかった…。
今は、不安も恐れも微塵もない…。

…あるのはただ、男への愛と…そして…あえかな欲望だ…。


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