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セイドレイ【完結】
第22章 種

数分が経過し、徐々に貴之の呼吸が落ち着いてくる。

「──亜美、ありがと。びっくりさせてごめんな」

「少し治まった…?大丈夫…?」

「うん…。もう大丈夫だから」

「ごめん…。私が変なこと言ったからだよね…」

「いや…亜美は悪くないよ。むしろ、亜美のほうが辛かったよな…。俺、ちょっと動揺しちゃって。さっきのことについてなんだけどさ…ちょっと…待っててもらっていいかな?」

「え…?」

「俺、ちゃんと考えるから…」

「あっ、実は…あの話には続きがあって…」

「…いいんだ。もう分かったから。俺、もしかしたら亜美を幸せにしてやれないかもしれないけど、でも…ちゃんと考えるからさ」

「ち、違うのっ…!水野くん、あのねっ…」

なにかを言いかけた亜美を、貴之がぎゅっと抱き締める。

「ごめんな…亜美。ごめん…ほんとにごめんっ──」

亜美を抱き締める貴之のカラダが、小刻みに震えていた。
そしてその瞳は、大粒の涙で溢れていた──。


その後、ふたりはいつもの場所で別れ、それぞれ家路についた。
亜美は無言で家に上がり、そのまま部屋のベッドに倒れ込む。


(水野くん…。結局病気なのか聞けなかった──)


薬を常備しているということは、持病なのだろう。
しかしそのことを貴之は一切、亜美に言おうとしなかった。
そして亜美も聞くことができなかった。

亜美はブレザーのポケットから、とあるものを取り出した。

それは、「ICレコーダー」だった。
録音件数の表示は、1件。


(水野くん、私のせいで…ごめんなさい。やっぱりこれは──)


そのとき、廊下から重量感のある足音が聞こえてくる。
慎二がやってくることを察知した亜美は、咄嗟にそのICレコーダーをベッドの下に隠した。

「── "妊婦JK" はお帰りかなぁ~?」

薄気味悪い笑みを浮かべ、慎二がズカズカと亜美の部屋に入ってくる。

「ごっ、ご主人様…。ちょうど今、帰ってきたところです…」

「ふぅ~ん。ま、いいけど。それより、今なんか隠したでしょ?」

「い、いや…なにもっ──」

「──はいはい。とぼけなくていいから。"ソレ" 、俺が預かるように新堂のおっさんから言われてんだよね~。だから早く渡して」

「……。分かり…ました」

亜美はなにかを諦めたような様子で、隠したそのICレコーダーを慎二に渡した。


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