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セイドレイ【完結】
第22章 種

「──ったく、なんで俺がこんなめんどくせぇこと…あ、データ消したりしてないよね?ちゃんと録音できてる?」

「はい…。大丈夫…です」

「ふぅん。まぁいいけど。てかさぁ、ちょっと着いてきてよ」

「は、はい…どちらに…?」

「いーから!奴隷はご主人様の言うこと聞いてりゃいいんだよ!早くっ!」

亜美は慎二に言われるがまま着いていくと、意外な場所の前で足が止まる。

そこは、亜美はおろか──家族でさえ立ち入ったことのない、慎二の部屋だった。

「──今日は特別に、ご主人様の部屋に入ることを許可しよ~う!」

ふざけた調子で慎二がドアを開け、部屋の中に入る。
亜美は思わず、足がすくんでしまう。

「おい。なにやってんの?さっさと入って」

「は、はい…。失礼…します──」

部屋の中へと入ると、そのあまりの空気の悪さに、亜美は思わず手で鼻を覆った


(なにっ…?!この部屋っ──)


常に窓は締め切られ、もう何年も換気が行われていない10畳ほどの部屋。
明かりはつけられておらず、部屋の隅におかれたパソコンの液晶から放たれる光だけが、薄暗い空間で存在感を放っていた。

思わず後ずさりする亜美の足に、なにが物が触れる。
よくよく目を凝らして床を見ると、足の踏み場もないほどの物やゴミ、脱ぎ捨てられた衣服が散乱していた。

それらと、不精な慎二の体臭が混ざりあって、部屋中に不快な臭気が充満していたのだ。


(いつもこんなところで…生活してるの?)


「──ヘヘッ。この部屋に入れてやるのはお前だけだぞ?なんか言うことないのかよ」

「お…お部屋にお招きいただいて…ありがとう…ございますっ…」

「グヒヒッ。ちょっと散らかってるけどね。でもここは俺の "聖域" だからさ!」

普通の感覚なら、5分と身がもたない部屋。
なぜ今さら、こんなタイミングでここへ招かれたのだろうか。

「今日は亜美に見せたいものがあってさ~!ちょっと待ってて、今電気つけるから…。あれ?リモコンどこやったっけ…えーっと──」


(なに…──?)


「──あ、あったあった!じゃあ行くよ?はいっ!」

薄暗かった部屋が、蛍光灯の明かりに照らされる。
亜美はそこに映し出された光景に──絶句した。


「キャッ…────!!」


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