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セイドレイ【完結】
第23章 折衝

亜美が貴之に妊娠の事実を伝えた日から数日後──。
武田家の客間には、座卓を取り囲む5人の姿があった。

雅彦と亜美。
その対面には貴之と──その父である俊之(としゆき)、そして母である紗枝(さえ)が座っている。

「──はじめまして。武田雅彦と申します。私は亜美の未成年後見人であり、事故で両親を亡くした亜美を引き取り育てています。言わば父親代わりです」

「は、はい…存じ上げております。このたびはうちの息子がとんでもないことをっ…」

雅彦の挨拶に対し、深々と頭を下げる俊之。

「単刀直入に申しますと。お宅の息子さんがうちの…娘、亜美を妊娠させたということなんですが、そういう認識でお間違いないでしょうか?」

萎縮する貴之の両親に対し、淡々と言葉を放つ雅彦。

「そ…それについてなんですが、まず、私たちとしましては、お宅の亜美さんとうちの貴之が交際していたことも知りませんでして…。その…実際に今何週目であるとか、大体いつごろの話なのかも不透明であり…。そもそも亜美さんは避妊薬を服用していた、と息子からは聞いているのですが…」

言葉を濁しながら、なに言いたげな俊之。

「──ほう。たしかに、亜美はピルを服用していましたよ。うちは産婦人科ですし。しかしそれは避妊のためではなく、あくまで生理不順のためです。避妊効果は100%ではありませんし、飲み忘れがあったかもしれません。ですがそれと今回のこと、なにか関係がありますか?事実、亜美は今妊娠しています」

雅彦は1枚の紙を取り出し、それを机の上に置いた。

「──これはエコーの写真です。現在7週目ですね。心音も確認できています」

エコー写真を食い入るように見つめる貴之と、その両親。


(え……?)


しかし亜美だけは、どこか不思議そうな顔をしていた。
そこへ、紗枝が口を挟む。

「──たしかに、妊娠はしておられると思います。ですが、その…本当に、うちの息子の子なのでしょうか?」

「こ、こら…!お前、もう少し言いかたに気をつけないか…!」

すかさず俊之が紗枝の発言をたしなめるが──どうやら夫婦とも、今回の件をすんなり認めているわけではないようだった。

「だってあなた……すいません。もちろん、うちの息子に非がないとは言いません。ですが──」

紗枝は言葉を詰まらせ、客間をしばしの沈黙が包む。


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