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セイドレイ【完結】
第24章 性夜の鐘

「──なんか怪しいなあ?急にしおらしくなっちゃってさ…俺たち、亜美に騙されてんじゃないの?」

慎二がそんなふうに水を差すと、再び雅彦が口を開いた。

「──まぁ、そう言うな。亜美だって散々悩んだ末に出した答えだ。家族なら温かく迎え入れてやるべきだろう。それに、これからはあまり亜美に嫌わんようにな。健一、慎二──いずれお前らのどちらかが、亜美を妻に迎えるかもしれんのだから」

「は、はぁ!?それって一体どういう…?」

「ちょ、ちょっと待てよ…親父、なに言っちゃってんの!?」

「まぁ、ワシが元気なうちは、亜美はワシのものだが。将来的にはお前らで協力してこの家を守り、いずれ跡継ぎを産んでもらわにゃならん。ありがたいことに亜美はそのつもりでいてくれてるらしいぞ?それともアレか?亜美では不満なのか?」

「おいおい、マジかよ…」

「ちょっと待って、全然話が入ってこねーわ…」

呆気に取られる健一と慎二に、雅彦はいたずらな笑みを浮かべる。

「──フンッ。亜美を引き取ると言ったときも、最初お前らはそんな反応だったな。それが今やどうだ?すっかり忘れて好き放題やってるじゃないか。そういうことだ。だが2人とも今のままでは、どちらにも亜美をやることはできん」

「…な、なんだよそれ?大体、兄貴はどっかの金持ちババアと見合い結婚すんだろ!?てことは俺しかいねぇじゃん??」

「あ!?別にまだ決まったわけじゃねーよ!お前こそゴミクズニートの分際で結婚とか図々しいんだよ。大体、亜美がお前なんか選ぶわけねぇだろこのキモオタクが!」

「──うるさい!喧嘩ならあとでやれ。健一、まずはお前はしっかりと研修を終えることだ。評価はワシの耳にも入っている。最近、少したるんでるようだからな。それと慎二。お前はまず、来年から仕事を探せ。バイトでもなんでもいい。少しずつ家の外へ出ることから始めろ。2人とも、まずはそれからだ」

「ちょ…なんか慎二ずるくねぇか?そんなんでいいのかよ…」

「はぁー!?バイトとか無理無理無理。働くとか意味分かんねぇし…」

それぞれに不満を口にする健一と慎二。
そんな2人の様子に、亜美は苦笑いを浮かべている。

しかしその表情は、どことなく穏やかにも見えた。

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