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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
一方その頃田中は、急遽予定が変更になった為、急いで準備をして緑地公園へと向かっていた。

見知らぬアドレスからメールが届いた時は不審に思ったが、待ち合わせ場所が変わっていないこともあり、そのメールが慎二からのものであるとあっさり信用してしまったのだ。

そして何より、もうすぐあの動画の少女に会えるという興奮の方が疑いよりも勝ってしまった。

何も知らない田中は真冬にも関わらず汗を滲ませ、胸の高鳴りを感じながら緑地公園のトイレへと足を踏み入れた。

「あ…田中ですどうも…、…あ…れ?」

そこで田中が目にしたのは、動画で見た「師匠」とは程遠い、スラリと背の高い痩せ型の高年男性だった。
その特徴からするにそれが『タカ』とも思えない。
もしや全く関係の無い偶然居合わせた人に声をかけてしまったのでは無いかと、田中は少し焦っていた。

するとその直後、田中は背後から何者かに羽交い締めにされる。

「ちょっ…!一体何なんだっ!?離せっ…離せ!!」

田中は必死に抵抗するが、背後の男は屈強であるのか身動きをとることができない。

すると今度は、目の前にいた男の方が、田中の腹に思い切り蹴りを入れてくる。

「ぐふっ…!!ぐふぉっ!!!」

あまりの痛みで顔を歪ませる田中に、その男が顔を寄せてこう言った。

「…はじめまして田中さん。悪かったですねぇ、急遽予定を変更しちゃったりして」

そう、田中の腹に蹴りを入れたのは他でもない新堂だった。
そして、後ろで羽交い締めにしているのは本山だったのだ。

「…ぐっ…何なんだあんた達は一体!!??」

状況が飲み込めない田中が声をあげる。
やはり自分は騙されていたのか。
痛みと恐怖に震えながらも、身動きが取れない。

「…失礼。申し遅れましたね。私、あなたの『師匠』とやらのちょっとした知り合いでしてね。今日は田中さんにお願いがあって来てもらったんですよ。まぁ…ここじゃ何ですし、お宅までお伺いしてよろしいですかね?」

「なっ…何を言ってるんです!?警察っ、警察呼びますよっ!??」

そう言った田中の首に、ひんやりとした感触が伝わる。

…ナイフだ。

後ろで羽交い締めにしている本山が、田中の首にナイフを突きつけたのだ。

田中は恐怖のあまり身を強ばらせ硬直する。

「…田中さん。私たちもあまり手荒な真似はしたくないんでね」
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