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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
そうして脅された田中は、公園の脇に停められていた本山の車に連れ込まれ、自宅まで案内するよう強要される。

車中で、亜美にまつわる大まかな話を聞かされた田中は、そんな話が現実にあるものかという驚きと、とんでもない事に首を突っ込んでしまったという恐怖に慄いていた。

田中は言われるがまま、二人を自宅に案内する。

「ほう…慎ましい部屋じゃないか。想像以上に狭いが…まぁ、所詮底辺が暮らす部屋だな、仕方あるまい」

部屋を見渡しながら新堂がそう吐き捨てる。

すると田中は慌てて土下座の姿勢を取る。

「すっ…すいません、ぼっ僕はただ、つい興味本位で…何も知らなかったんですっ!まさか亜美さんがそのような方とは…今日あった事は誰にも言いません!ですから、どうか命だけはっ…」

そう懇願し、頭を下げる田中。

その頭を、新堂は足で踏みつけながらこう言った。

「…興味本位で手を出しちゃいけないんですよねぇ…あの女は。もちろん、あなたを殺したりはしませんからご安心を…こんな虫ケラ同然の命の為に手を汚す必要はありませんしねぇ。ただ、ちょっと私に協力してくればそれでいいんです」

新堂はグリグリと田中の頭を踏みにじりながら、田中に以下を実行するよう命ずる。

明日27日に、予定通り慎二と亜美に会うこと。
そしてその際に、どうにかして二人をこの部屋へ招き、睡眠薬を飲ませること。
状況次第では『タカ』も巻き添えにして構わないこと。

ひとまずはその三点だった。

しかし、実際には想定外の事態が発生してしまう。

『タカ』が…
貴之が、一時的に亜美を連れ去ってしまったからだ。

田中は亜美を探すフリをしながら、逐一その状況を新堂にメールで伝えていた。

これには新堂も驚いたが、程なくして亜美の無事が確認されたことを知ると、予定通り、二人を家に連れ込むよう指示を続行した。

しかし、またここで想定外のことが起きる。
慎二は、睡眠薬を入れたお茶に口をつけないばかりか、あろうことか亜美を置いて外出してしまうのだ。

その連絡を受けた新堂は計画を変更し、慎二が戻ってくる前に亜美に睡眠薬を飲ませ、クローゼットに隠して置くよう指示を変更した。

そして慎二が戻って来たら、亜美が『タカ』によって連れ去られたということにする。

状況は二転三転したが、新堂はそれすら楽しんでいるようだった。

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