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せめて、今夜だけ…
第12章 蛹、羽化の時

仕事柄、いろんな職業、いろんな企業の人間と知り合えるというのが営業のいい所だな。
普段なら知り合う事のない職業の人間、立ち入る事すらしない場所まで知れてしまう。

ここもその1つ…。




――――――「い、嫌…っ」
「嫌、じゃねぇだろ?」



コンクリートが打ち付けてあるだけの閑静な部屋。
薄暗く、カビ臭い広い部屋。
マットレスのベッドと分娩台、怪しげな玩具がズラリと並べてある。

ここは、SMルームがあるラブホテル。
以前、このホテルの家具を任された事があり、その時にこのホテルの経営者と仲良くなったのだ。

俺が今いる部屋はSMルームだが、他の部屋は普通の部屋。
うちの家具が置いてあるスウィートルームもある。
いろんなコンセプトの部屋があるというのがこのホテルの売りだそうだ。

その部屋で、裸にひん剥いた魚月を分娩台に座らせて、両手は頭上で固定。
足も開脚させたままで固定。
魚月からすれば屈辱的な格好。
恥ずかしさで顔を赤らめ今にも泣き出しそう。

「お願い…、もう、やめて…」
「まだわかってねぇの?お前に拒否権なんかねぇんだよ?」

こんな部屋に連れ込まれるとは知らずに、あの写真をバラ撒かれたくない一心で俺の元へやって来た魚月。
詰めが甘いと言いたいところだが、そんなところも可愛くて仕方ない。




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