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せめて、今夜だけ…
第4章 飢餓
あの女、俺からの誘いを断りやがった。
こんな事初めてだ。
しかも、この俺に言い返して、食ってかかりやがった。
いきなりあんな事を言った俺も悪いが、初対面の客にあの態度…。

一瞬でも可愛いと思った俺がバカだったか…。

「魚塚、聞いてんのかぁぁぁっ!」

そんな俺に、何も知らない桐谷は更に詰め寄って来る。
マジでうるせぇ。
俺は今、それどころじゃねぇんだよ…。

あの女、金で買えないものもあるとか言ってたけど
どうせ、愛だの恋だの、そんなくだらねぇもんだろう。
金さえあれば愛や恋なんて思いのままだ。
あの女だって、金が欲しいから水商売なんてやってんだろう。

「はぁ…」
一息ついた俺は、吠える桐谷を無視して再びパソコンに向き直した。
急いで片付けたい仕事が残ってるんだった。

気にすることはない。
たかが水商売の女に断られただけだ。
女なんて、吐いて捨てるほどいるんだ。
あの店の雰囲気は気に入ったがあの女は気に食わない。
自宅とは逆方向だし、滅多に行くこともないだろう。

―――――昨夜の事はもう忘れようと思った。
ほろ酔いだったとは言え、いきなりあんな事を口走った俺にも非はある。
俺には大事な仕事がある。

この手に残ってる感触だって、初めて女に振り払われた、というだけの事。

それだけの事なのだから。



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