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せめて、今夜だけ…
第28章 満月と魚

俺は魚月に会ってわかった。
驚かされることばかりだ。

まさか俺の中に、こんな衝動があるなんて思わなかった。

誰かを深く愛すること。
誰かを本気で欲しがること。

魚月以外はいらない。
魚月以外、何も欲しくない。

地位も名誉も、魚月と比べれば取るに足らない小さなことばかり。

「だから、魚月も覚悟を決めろ…」



もう逃げられない。
魚月は俺から逃げられない。
逃がしてなんかやらない。
魚月の逃げ道は俺が全部塞いでしまったから。

「か、覚悟って…」

顔を真っ赤にさせて魚月。
ようやく自分の置かれてる状況を把握したようだ。



これで俺は市原グループとも翔太とも関係ない。
Bijouxとも何の関わりもなくなった。



「今お前の目の前にいるのは、お前に惚れてるただの男だ」
「―――――…っ!」



ここまで迫ったんだ、ノーとは言わさない。
それに魚月の気持ちは、もうとっくに知ってるんだから。
ニヤリと笑う俺を見て、魚月も観念したのか何の口答えもして来ない。

「……呆れた人ですね」
「あぁ。自分でもそう思うよ」

ようやく…
俺はようやく手に入れようとしているんだ。


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