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あらがわない夜を、あなたと
第1章 夜は優しく始まる
カーキ色のワンピース、ペチコート、キャミソール、ストッキング…。

格いたるがみなみの衣類を脱がせていく。

「膝立ちになって手を後ろに回して」

ブラジャーとパンツを残したまま、ベッドの上で手枷をかけられる。
みなみは、この意思を一つずつ奪われていく過程がたまらなく好きだ。

格は後ろ手に拘束されたみなみを、ゆっくりと仰向けに寝かせていく。
俗にいう、SMの関係ではあるものの、格は努めて優しい。
みなみのロングヘア―を右手でなでながら、左手で次の道具を引き寄せる。
さらさらと流す感じが気持ちいい。

手枷に加えて、格が持ち出したのは、黒いアイマスクだ。
触れ合うだけのキスを交わしながら、みなみの視界を奪っていく。

みなみは、いわゆる「明るいタイプ」と評されることが多いし、実際に自分のことをそうだと思っている。
一方で、人前でさらけ出す爛漫さと、性的嗜好にはなんら関係性はないということも、同時に考えている。

同業者の飲み会で知り合った格との関係は、半年になる。
一回り年上の格は快活にしゃべっていた。

けれども…。

同じように朗らかに会話に参加しつつ、リムフレームの奥の切れ長の瞳が口角を上げながらにして冷たいままであるのを、みなみは見抜いた。
手枷に目隠しをされてしまっては、自分の意思の大半を奪われたも同然だ。

自分の意思を持たない人間を、みなみは嫌う。
意思をもって、思考して生きていきくことを、自分自身に課している。

そんな人生を描くなかでも、これだけは別だ。
あえて、意思を差し出すこの一時、相手に頼るより他はない状態。

矛盾する行為に、体の底から熱を帯び始める。
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