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あらがわない夜を、あなたと
第2章 ずっと怠惰な夜だった
こじれた性癖を持つ多くの者がそうであるように、みなみは早熟であった。
きっかけは図書館で見つけた一冊の単行本だ。

中学2年の夏休み、梶井基次郎『檸檬』が読みたく、検索機に「れもん」の3文字を打ち込んだ。
当該書名とともに並んだ、『檸檬婦人』の4文字。著者名は「団鬼六」とあった。

帰宅後、4文字の書名の単行本をむさぼるようにして読んだ。

こんなものが公立の図書館にあってよいのだろうか…。

小説の世界観への嫌悪はなく、体がぞくぞくとする不思議な感じに驚いた。
このときまだ、初潮すら迎えていなかったというのに。

団鬼六とは何者だろうか、ほかにどういった小説を書いているのだろうか。
たぶん、『檸檬婦人』をその夜のうちに読み切れた時点で、はなからその素質はあったのだろう。
作家の正体を明らかにして以降、みなみは純文学、大衆文学をバランスよく読みがら、間に官能小説を挟み込み、読書歴を重ねていった。
一方で、学校でのみなみといえば、勉強はできるけど、決してそれを鼻にかけない、どちらかと問われるまでもなく「明るくておもしろい」とされる人物像であり、本人はそれを壊すつもりはなかった。

すべては私だけの秘密…。
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