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僕と彼のイルミネーション
第1章 繁華街
夕方近くになり、涼しくなってきた繁華街へ初めて足を踏み入れた。
僕が育った場所とは大違い。この時間になっても、たくさんの人々が行き来している。
行く当ても無く、煌びやかな店を眺めながら歩いていた。
「キミ、名前は? いくつ?」
すれ違いざまに声を掛けてきたのは、三十代に見える男性。
「瑞希(みずき)。18……」
「幼く見えるね」
18歳なのは事実。
バイトで金を貯め、卒業式の後に親を説得が反対された。夏になり、家出同然に生まれ育った町を出てきて一週間。
自分の性癖に気付いたのは小学生からだったが、誰にも話せずにいた。
東京へ来れば、何かが変わる。そう思いネットカフェで寝泊まりしていたが、決心して夜の街へ出てみた。
「どっかの店の子?」
男の質問に、意味も分からず首を振る。
「可愛いから、声かけたんだ。呑みに行く?」
いつもそう。子供の頃から言われるのは、“格好いい”より“可愛い”ばかり。
僕の憧れは、逞しい男性なのに、身長は170cmに届かないくらい。生まれつき色白で、夏に焼いてもすぐ戻ってしまう。童顔のせいで、中学生に間違えられる事も多かった。
「18だから、呑めません……」
酒も煙草にも、興味は無い。田舎町では住民全員が知り合いで、スナックが一件あっただけ。
「じゃあ、どこ行くの? 本当は、少し前から見てたんだ」
「え……」
「俺じゃ、ダメかな?」
男の言っている意味が分からない。
「二万でどう?」
小声で訊かれ、やっと何となく理解出来た。
ここは、男同士が呑み歩く街。体を売る店もあるのは知っている。
「ごめんなさい……」
その場から、走って逃げてしまった。
二万と言うのは、体を売る代償だろう。男同士のセックスに、興味はある。でも、会ったばかりの人とは嫌だ。
好きな人と結ばれる。そんな、女の子みたいな夢を密かに持っている。
路地を曲がって振り返ると、男は着いてきていない。
この街に来れば何か変われると思ったが、軽くあしらうほど慣れていなかった。
僕には、まだ早かったんだろうか。
頼れる人もいない、知らない街。
仕事を探そうとはしたが、住所不定じゃどこにも雇ってもらえなかった。