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僕と彼のイルミネーション
第1章 繁華街
気を取り直して歩き出すと、頭にポツンと当たる感触。
雨だ。
初めてこの街へ出たのに、歓迎されていないよう。
通りへ戻ると、強くなる雨に走っている人ばかり。僕も走り、適当な軒下へ入った。
溜息。
やまない雨を眺めていると、横からの視線を感じた。
背の高い青年が、驚いたように僕を見ている。
僕より20cm近く背が高い。大きな目と、筋が通っている鼻と大き目の口。黒髪は無造作風にセットされていて、体つきも男らしい。
僕もこんな風になりたかった。
青年にずっと見つめられ、視線を逸らす。
「お前、名前は?」
また、さっきの男のような事を言われるんだろうか。
僕は黙ったまま俯く。
この街へ出るのは、やはり早かったんだろう。後悔したが、もう遅い。
「ウチで、働かねえか?」
「え……」
仕事が見つかるのは嬉しい。でも、知らない人に急に誘われるなんて。
「普通の呑み屋だから。行こうぜ」
腕を掴まれ、土砂降りの中を走らされる。怖いと思いながらも、しっかりと腕を掴まれていて、逃げられない。
びしょ濡れになって着いたのは、雑居ビルの前。その一階の鍵を開け、中へ連れ込まれた。
「俺は龍(りゅう)」
青年。龍にタオルを投げられ、顔を拭く。彼も別のタオルで頭を拭きながら、ソファーへ座るよう言われた。
店内はカウンター席が八脚と、テーブル席が六卓。
「名前は? いくつだ?」
「瑞希。18……」
「幼く見えるけど、ホントか?」
その言葉に、黙って頷く。
「じゃあ働けるな。こういう店の経験は?」
「ありま、せん……」
いきなり連れて来られて、働けだなんて。何か変な仕事だろうか。
「まずは、カウンター内だけでいいから。慣れるまでは」
「あの……。僕……」
「ん?」
優しい笑顔を向けられた。
「どこに住んでんだ? 近くか?」
「いえ……。ネットカフェで……」
「そっか……。じゃあ、ウチ来るか?」
驚いて龍を見る。
「部屋は空いてるから。家賃もいらねえし。あ、ココの時給は、1000円からな。営業は十八時から二時まで。準備があるから、出勤は十七時。なんか、質問は?」
「えっと……」
「安心しろ。客を取るような店じゃねえから。ただの呑み屋だよ」