この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕と彼のイルミネーション
第11章 イルミネーション
「何?」
「そのまま動くなよ」
そう言ってから、彼が立ち上がる。
いきなり、店内が真っ暗になった。
「龍?」
窓も無い店は真っ暗な状態で、少し不安になる。
その瞬間、室内のクリスマス用のネオンだけが点いた。
「え……?」
戻って来た龍が、隣へ座って僕を抱き寄せる。
「悪かったな。イルミネーション、見せてやれなくて」
「え……」
「代わりになんねえと思うけど、これで勘弁してくれよ」
確かに、街のイルミネーションを見てみたいとは思っていた。でも、そんなに引きずっていたわけでも無い。
いつも営業中は薄暗いだけで、ネオンはそう目立つ感じゃない。真っ暗にした今は、まるでイルミネーションのよう。
「瑞希。これからも、よろしくな。なんて……」
「うん。僕の方こそ……」
心からの返事。
遠い街で出会えた奇跡。
それも今では、運命のように思える。
龍と出会う為に、僕は生まれてきた。
長い時間をかけて会えた、掛け替えのない人。そんな彼から絶対に離れない。
やっと手に入れた幸せ。この幸せの中で生きて行かれるなら、他には何もいらない。
「瑞希……」
触れるだけのキスをすると、龍は珍しく照れているよう。
「龍……」
僕からもキスを返した。
彼は驚いた顔をしている。
笑顔で、龍を見つめた。
指先が触れて、自然と手をつなぐ。
誰も見た事が無い、僕と彼だけのイルミネーションの中、強く抱きしめ合った。
「僕と彼のイルミネーション」 終わり。