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置き薬屋と人妻。
第3章 その時は
 置き薬屋の潮田が来て数日経ったころ、小さな小包が望結宛に届いた。
 望結はすぐさま小包を開封してみる。中には怪しげな黒々とした箱。その中身はコンドームが一箱、手のひらに納まりそうな小箱と小さな巾着が入っていた。
「え、これ全部アダルトじゃない」
 望結は辺りを見渡した。
 箱の底には「モニターアンケート」と書かれた封筒が入っていた。
 ――あ、置き薬の……。
 スマホで潮田に電話をかけてみた。なぜか胸が高鳴っていた。
「もしもし、私、安達と……」
『ああ、安達さま、先日はお世話になりました』
 受話器越しに潮田が頭を下げているのが分かった。潮田が続ける。
『本日はいかがなさいましたか?』
「今日、そちらからお荷物が……えっと……」
 耳たぶが真っ赤に染まるのが分かる。望結は温度を測るように自分の頬を手のひらで包んだ。
『ああ、到着しましたか? では、アンケートを書いて頂けましたら……』
「あっ、……あの、届いたのは……ア、アダルト……なんですけど……」
『ああ、奥さまにお選び頂いた……』
 ――私が選んだんだ。
 望結は全く覚えていなかった。望結は、ただ潮田と話すのが楽しく、ノリでつい申し込んでしまったのだ。以前訪問販売で法外な高額商品を購入させられたときもそうだった。
「あの、恥ずかしいんですけど、私、主人とはもう……」
 潮田が息を飲む音が聞こえた。
『ははは……じゃあ……僕となんて……ははは……なんて……だけど奥さまキレイなので、色んな人から誘惑なんて……』
 ――誘惑なんて誰もしてくれないわ。だけど……。
 胸が高鳴っていた。
「まあ、嘘や冗談でも嬉しいです。優しいですね。潮田さん……」
 望結は笑って言った。
『いいえ、嘘や冗談ではありません。奥さまが独身なら僕が誘っていますよ』
「ハイ、よろしくお願いします。その時は……」
 と、望結は笑って電話を切った。
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