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舞い降りた天使
第12章 通告

鍵を閉めて
桜が眠っているのを確認すると
私は腰が抜けたように
ずるずると床に座り込んでしまった

どうしよう…

ホッとしたと同時に
なんとも言えない恐怖心が湧き上がり
まるで
時間が止まったように動けない

どうしよう…どうしよう…

動悸が激しくなるのを感じながら
とにかくその場で
うずくまっていると

「何鍵閉めてんねん」

ドアの向こうから
パパの声が聞こえた

大きな声ではないけど
不機嫌そうなその声に
私の身体が震え始めた

「男でもできたんちゃうやろな」

「……」


「まぁええわ」


「……」


「男ができたとしても
勝手なことさせへんで。
俺は絶対別れへんからな」


「……」


「あーそれとな
桜に言うとけ。
引っ越しや」


えっ…


「沖縄や。
お前に得意な仕事やってもらうことになったんや。
楽しみにしとけよ」

沖縄…

「そんな急に…」

「急でもなんでも
もう決まったんや。
行かへんとか許さへんからな!
もともと仕事させるために
結婚したんや。
タイミング悪う妊娠してもうて
最初の仕事は
上手いこと行かへんかったけどなぁ。
まぁこれから
よう働いてくれや」


「……っ…」


パパが
リビングへと戻る足音を聞きながら
私は
こぼれ落ちる涙を止められないでいた


どこかで気づいてた

あの人は
私の資格やスキルが
必要だっただけかもしれないって。

でもずっと
気づかないふりをして
ずっと
そうじゃないって期待して
頑張ってきたのに…


沖縄なんて行きたくない

やっと学校に行けるようになった桜を
転校させるなんて考えられない

別れたい

もう
一緒になんて
暮らしたくもない

桜さえいれば
桜さえいてくれたら
私は何も望まない

…でも…

心の中で
熱い覚悟のようなものが芽生えると同時に
私の脳裏にあの人の言葉が蘇えり
私はまた震えだした身体を止められないまま
その場にうずくまった


『勝手なことさせへんで。
俺は絶対別れへんからな』

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