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舞い降りた天使
第16章 空港

どこにも行かない


それが
本当なら
どんなに幸せだろう

でもそんなこと
叶うはずがない

私はそう思いながら
巧くんを心配させないように
ううん
困らせないように
笑顔でうなずいて見せた

そう
今だけ
今だけでもいい
大好きな巧くんに
抱きしめられていたい

私は
巧くんの胸に顔を埋めながら
素肌の巧くんに抱きついた

せめて
巧くんが帰ってしまうその時まで…

「真穂」

巧くんの胸の中で聞く
巧くんの声はとても心地いい
優しく私を包むように聞こえる声に耳を傾けながら
その声をもっと聞きたくて
私は簡単な返事をした

「ん?」

「教えて欲しいことあるんだ」

聞きたいこと、いっぱいあるよね
私も
話したいこと
いっぱいあるの

「うん」

「どうして…ここに居るのか。
なんで
居なくなったのか
あの日
どうして来てくれなかったのか…」

巧くんは
少し言いづらそうに
そう呟くと
私をきつく抱きしめ直した

どうして沖縄に居るのか
どうして会社を辞めたのか
どうして
風邪をひいてる巧くんの部屋に行かなかったのか

わずか半年前のことなのに
毎日が苦し過ぎて
それが何年も前のことのように感じながら
私は巧くんに返事をした

「話すね…全部」

「…うん」
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