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舞い降りた天使
第1章 レモングラス
この職場はプログラマーの集団

制服もなく
身なりはかなり自由

ボロボロのTシャツを着てる
男性だっている

それにかまけて
家事、育児、仕事に追われてる私は
今日も決しておしゃれとは言えない
女子力の低い格好もしていた


栗原くんからすれば
年上の私は
ただの恥ずかしい…おばさん

だよね


だから私は

「あ、ありがとね。
じゃあハーブティーいただきます」

「あ、はい。
残業頑張って下さい」

「栗原くんも」


早く話を切り上げたい

今の私を
もうこれ以上見られたくない

そう思った


それなのに…


「あれ?」

「え?」

「じゃあ今日、娘さんは?」

桜のことが気になったのか
栗原くんは
まだ私の側から離れることなく
話しかけてきた


「今日は珍しく
お友達の誕生日パーティーに
およばれに行ってて。
あ、でももう
お迎えに行かなきゃ」


そんなのは嘘

本当は
あと30分仕事をするつもりだったのに
私は早くこの場から消え去りたくて
たまらなくなっていた


「そうですか、大変ですね」


「ううん、当たり前のことだから」


ただただ恥ずかしい

それだけの理由で
私は栗原くんを避けるように背を向け
ハーブティーを口にしながら
いそいそと片付けを始めていた

するとその時
私の背後から
栗原くんの優しい声が聞こえた


「徳永さん

いいお母さんですね」



えっ…

いい…お母さん?


私が?


そんなこと…ない

だって
そんなの


今まで
言われたこと…ない



「そ、そんなことないよ

お迎えに行くのなんて
当たり前のことだし」


そう
そんなの当たり前

それに私は
いいお母さんなんかじゃないの

私はダメなお母さんで
いつも注意されてばかりで
桜には
申し訳ないくらいで…


「そうなのかな…」


…えっ?

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