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最後の恋に花束を
第8章 大学最後の冬

彼の腕に抱き締められた私は、静かに涙を零し続けた。その間彼と言葉を交わすことは無く、彼はただただ私の身体を摩り続けてくれていた。


数分が経っただろうか。少しずつ落ち着きを取り戻した私から、そっと手を離す彼。身体が離れると、彼の甘い香りも遠のいてしまった。


『 …落ち着いた? 』

「 うん… だいぶ 」


そう呟くと彼は私の頭をクシャクシャと撫でる。その愛おしい彼の手を、私はキュッと握った。



貴方がいない時、
どれだけ私が貴方の事を考えていたか
知らないでしょう。

そして、貴方が私の前に現れる時、
私は貴方のことを必要としているの。
知らないでしょう。

私はただただ純粋に…
貴方に " 愛されたい "




「 ハルくん… 好き 」

『 … ん 』

「 どこにも… 行かないで 」

『 俺はどこにも行かないよ 』

「 … 本当に? 」


私と彼の、淡々とした言葉のやりとりが続く。
私の本心が、次々に言葉となって現れる。

私は自分の気持ちが抑えきれないでいる事を…
この時確信した。



『 可奈は、俺とどうなりたいの? 』



その言葉に、思わず彼の瞳に視線が移る。


まるで私の心を読んでいたかのような発言に、心臓が高鳴る。彼の瞳は真っ直ぐに私を見つめている。



( どうなりたいか… なんて… )



そんな事、もう充分な程に分かっていた。



『 俺と、どうなりたいの? 』



再び彼は私に問いかける。
そして私は、息を飲んだ。




「 私は… 貴方の恋人になりたい… 」




交わる視線。高鳴る鼓動。
彼も喉を鳴らして息を飲むのが分かった。

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