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最後の恋に花束を
第8章 大学最後の冬
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『 うん… それで? 』
昨日の事を全て話し終えた私と彼は、ベッドに腰掛けていた。眉間に皺が寄りいつもより苛立っている彼の表情は、何処と無く久しく感じられる。
『 それで、避妊はした? 』
「 多分… 帰る時確認したから… 」
チラリと彼を見るとパッチリと視線が合う。吸い込まれそうな瞳に、視線が絡み合った。
『 …… ハァ 』
その瞬間彼が大きな溜息を吐いた。溜息と共に視線は逸れ、彼の視線は部屋のどこを見るでも無く、ただただ空間を見つめている。
『 あー… 』
再び溜息と共に、言葉を漏らす。
天井を見上げた彼の右手は握り拳を作り、少しだけ震えているのが分かった。
「 … ごめん 」
両腕で自分の身体を摩りながら俯く。全てを話し終えた後でも、身体の違和感は拭えないでいた。
『 … 何で可奈が謝んの 』
「 だって私が… 」
『 あーマジでその男殺してぇ 』
天井を見上げたままの彼は少しだけ笑みを零すと、私の言葉を遮る様にそう呟く。横から見えるその彼の瞳は1ミリも笑うことなく、宙を見ている。
「 ねぇ… ハルくん… 」
『 ん? なに? 』
私の言葉に気が付いたように優しい表情に戻る彼。彼は私を真っ直ぐに見つめていた。
「 … 身体が 」
『 ん? 』
「 …身体が気持ち悪くて 」
( 好きでも無い人に犯されたこの身体が… )
その言葉を口にしようとした瞬間、彼の前では見せまいと我慢していた涙が一気に溢れ出た。慌てて顔を逸らし俯くと、膝の上にポタポタと大粒の涙が滴り落ちた。
「 …うぅっ 」
堪えてもこらえても溢れ出る涙に唇を噛み締める。
意思の弱い自分のせい…
自分に対する苛立ちと共に噛み締めた唇から、ジュワッと血の味が滲み出る。
『 … 可奈 』
耳元で囁くような彼の声に驚き、ピクリと身体が跳ねる。彼の腕がスルリと伸びるのが視界に入ったかと思うと、彼の腕に抱き締められ、私は彼の甘い香りと温もりに一気に包まれた。
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