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最後の恋に花束を
第3章 高校二年の秋
初めて私が遙に書道を見せたあの夏の日。書き終わった作品を見て、彼は目を輝かせていた。パフォーマンスを見ることが初めてという彼は、それなりに書道の魅力を感じ取ってくれていたようだった。
それから一年が過ぎ学年もひとつ上がり外の景色は紅葉で鮮やかに紅く染まる頃。
『 おーい、一ノ瀬 』
ガチャっと勢いよく書道室のドアが開く。そこには遙の姿があった。もちろん部活動のある日の放課後のことだ。
『 また来たんですか、青山くん 』
そう先生が口にする。一年前に彼に書道を見せてからというもの、暇さえあれば書道室に寄っては、皆が書く姿をあの大きな瞳で眺めていた。
『 あれ?…一ノ瀬は居ないんですか?』
珍しく部員が多く着席して文字を書いている中、私を探す彼。私はその様子を準備室のドアの隙間から隠れて見ていた。
『 今日は来てませんよ。』
『 うぃーっす 』
その情報だけを手に入れると、遙はすぐに書道室から姿を消した。
『 はぁ… これでいいんですか? 』
呆れ半分にそう小さく先生が口を開くと、準備室へと目を向ける。そのやり取りを準備室のドアの隙間から見ていた私は、ゆっくりとドアを開けた。
「 せんせ〜ありがとう、助かりました… 」
準備室から出た私は、協力してくれた先生にぺこりと頭を下げる。本当に優しい先生で良かったと心から思いながら。
『 ほら、やっぱりイッチー先輩目当てじゃないですか!』
その様子を見ていた後輩のユウ君が、突然立ち上がって声を荒げた。