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最後の恋に花束を
第4章 高校三年の春

「 あっ… 青山くん… 」

『 もうその呼び方辞めねー?』


そう言いながら私の隣に腰掛ける彼。
" 青山 遙 " だ …。


「 じゃあ… なんて呼べば良いの… 」

『 ハルくん 』

「 は…るくん 」


迷いの無い彼の言葉につられて口にすると、よく出来ました、と彼は微笑んだ。それはいつもの笑顔だった。


『 寒くない? 』

「 ん… 少し寒いかも… 」


季節は春といえど、陽が落ちると冷え込んでいて座っていたベンチの冷たさも少しばかり感じていた。


『 お茶しましょうよ、お嬢さん 』


そう言うと、彼は私の手を握る。

綺麗なその手で。

優しく ギュッ と私の手を握った。


「 ハイ … 」


そう返事をすると、彼はニコッと微笑む。私の手を握ったまま、まるで恋人のように肩を寄せ歩き始める。向かった先は行きつけの喫茶店だった。


『 なんか、あった?』


平日の夜の喫茶店は混み合っていて、一番奥の席に座った私たちの声は、周りの声にかき消されるかのようだった。


「 ん… ちょっと 」

『 この世の終わりみたいな顔してたもんな 』


ケラケラと笑いながらそう言う彼は、いつもと同じ様子だった。あの半年前の感情のわらかない表情ではなく、暖かい笑顔を放っていた。

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