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最後の恋に花束を
第2章 高校一年の夏
高校一年生の体育祭前。本格的な夏の暑さが訪れる前の、体育祭の予行練習が行われていた時のこと。その日は快晴で、初夏の訪れを感じられる程の蒸し暑い日だった。
短距離走の時間測定に駆り出された私は、ストップウォッチ片手にグラウンドで時間測定していた。
( あくび止まんないや…寝不足じゃ無いのに )
あくびが止まらず急激な眠気に襲われる。太陽がジリジリと私の体力を奪っていく中、突然に冷や汗が止まらなくなり、その場で倒れてしまった。
私はどうやら脳貧血を起こしたようで、気がつくと保健室のベッドに横になっている状態だった。
「 ん… 」
目を覚まして辺りを見回すと、カーテンで仕切られていて辺りの様子が確認できない。カーテン越しでも認識できたのは、男子生徒が保健室の先生と喋っている、という事だけだった。
「 … せんせ ー? 」
身体を起こすのが面倒だった私は、寝たままの体勢で先生を呼ぶ。
『 あら、目が覚めたかしら?』
優しい声とともに、カーテンが開く。
そこには見慣れた保健室の先生の姿があった。
『 おっ、じゃあ俺行くわ! 』
顔の見えない男子生徒の声だけが聞こえてきたと思うと、保健室のドアが開閉する音がした。
『 青山くん、ありがとうね 』
保健室の先生は、にこやかに彼の方を見る。けれど私から彼の姿は見えることなく、保健室は静まり返った。