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君に熱視線゚
第50章 番外編

チュッと小さな濡れた音が静かな寝室に響く。


触れ合う距離。


手元に戻って来てくれた苗を愛しげに見詰めると、苗の後頭部に手を添えて晴樹は唇を開き首を傾けた──


「──…?」


引き寄せようとした苗の後頭部に力が入っている…

晴樹はゆっくりと半身を起こすと苗の顔を覗き込んだ。


「なえ…お前…起きてるだろ…」


「………」


「なえ…」


「……っ」

苗はそーっと薄目を開けて晴樹を盗み見た。


「……寝てる間にいろいろやっちゃおかな──…」


「──…!」

晴樹の脅しの言葉に苗の薄目がカッと開いていた。

晴樹は枕を肘にあて横を向いたまま苗を見詰めてニヤニヤしている。

「いつ帰ってきた?」

晴樹は率直に苗に聞いていた…

「……家に行って直ぐお母ちゃんに追い出された…」

「マジで!?──」

苗はグスンと鼻を啜った。

「普通なら離婚問題よっ!──っで…うぅっ」


「……だな…」


さすが、おばさん……ぷっ…


泣きながらグスグス言う苗の下唇が大将のように突き出してきている。

晴樹は笑いをこらえ、苗の涙ながらの訴えを聞いてあげていた。


「…で──…ここに戻って来たってことは覚悟を決めたってことだろ?」


「……っ…うぅっ」


「泣くな…」

顔をくしゃりと歪めた苗を晴樹は叱る。

「そんなに泣くほど嫌ならシなくていい──…浮気するから」

「──…!」

晴樹のその一言に苗の目がショックで見開いた。


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