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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜


甘い時間をとそればかりを想像していたのに……

晴樹はきゅっと下唇を噛み締める。

「苗…」

「な、なに…?」

覗き込んで近付く晴樹の表情に苗はつい逃げ腰で答えていた。

「なんで逃げてんだよ」

「いや…だ、だって…兄さん、“ちゅう”しそうだからっ…」

「……っ…」

晴樹は怯えたように身構える苗に思いきりムッとして吠えていた。

「──…っ…帰ってきて久し振りに逢ったんだからキスぐらいするだろ普通っ」

やっぱり相変わらずな苗に怒れてしまう。

やっと二人きりになれたって言うのにほんとに毎回毎回コイツはっ…

「苗──…」

玄関で壁に手を付き苗を囲う。

苗は表情を変えた晴樹にヒッと怯えた声を漏らして目を強く瞑った。

「顔上げろ…」

「…う……」

「なえ…」

「……っ…」

囁いた晴樹の息が頬に掛かる。

晴樹の唇の体温がゆっくりと近付いてくると、それは強く口を結んでいた苗の唇をゆっくりと柔らかく食んでいた──

チュッと軽い音が鳴る。

顔を交差しながら甘く吸い付いては離れ、覗き込む晴樹の優しい触れ方に、苗は晴樹と肌を重ねた時のことを思い出し、強く閉じていた目をうっすらと開いていた。

「なえ…ただいま」

晴樹のその声に苗は照れたように小さく頷く。

微かに頬を染めて目を逸らした苗を見つめると晴樹は安心した溜め息を漏らす。
そして、今度は深く苗に口付けていた。

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