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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜

田中家の居間には座卓を二台繋げた食卓が用意されている。
大家族が揃ったそこには昔懐かしい昭和の風景が垣間見えていた。

相変わらず賑やかな食事の時間だ。

「姉ちゃん、オカワリ!」

口を揃えて御代わりをねだる三つ子達。
そして、

「悟、ようけ食え!」

「……っ…」

九十歳を越えた稲婆ちゃんがワザワザ口でねっぶった箸で、悟の皿にアジのフライを二枚摘んで乗せてくる。

「稲ばあ、一枚でいいからって…」

「ほうか、じゃあ一枚戻さないかんな…」

「…あ…またっ…」

ちゅくちゅくと箸を吸うと、稲婆さんはまた箸先をねぶってアジフライを大皿に戻していた……。

余計な奴が混ざってはいれど、やっぱりこの明るい家族に癒される。

NYでの侘しい食事風景とはまったく違う。

晴樹は食事を済ませて妹の子守りをオカンと交代した苗に目を向けた。

みのりを抱っこしてあやす苗を眺め、自然と笑みが浮かぶ。

いずれ、自分達の間にも子供ができる時がくる。

子育てに慣れた苗を見ていると、その時の光景も違和感なく思い描けてしまう。

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