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エメラルドの鎮魂歌
第7章 木漏れ日の道
「…私はなかなか粋なことをしたと思わないか?八雲くん」
ゴブラン織りのカーテンを手繰り寄せ、窓の外の光景に目を細めながら、青山は上機嫌に話しかけてきた。

…庭園では瑞葉と藍が二人きりで散策をしていた。
シルバーフォックスの毛皮に、裾の長い真珠色のベルベットタフタのドレス…。
冬の清潔な澄み切った光が、蜂蜜色の美しい長い髪を眩しいくらいに煌めかせる。
…それにも勝って輝いているのは、瑞葉の笑顔だ。
その美しいエメラルドの瞳をきらきらと輝かせているのが、こちらにいても手に取るように分かるほどである。

初めて会ったばかりだと言うのに、瑞葉は藍に対して全く警戒心も抱かずに素直に心を開いているようだ。


「ねえ、瑞葉。庭を案内してよ」
そう無遠慮に申し出た藍に嫌な貌ひとつせず、寧ろ嬉しそうに頷いた。
そして、八雲を見上げ許しを乞うように瞬きをした。
そんな表情でねだるのは、滅多にないことだった。
「…温かい格好をなさるのならば…。
今、毛皮をお持ちいたしましょう」
八雲は仕方なく許可をした。


「…瑞葉様がお歩きになれることをご存知なのは、青山様だけでした。
…それに藍様が加わったので、瑞葉様はほっとされているのでしょう。
瑞葉様と藍様はお年もお近い。
血も繋がっておられます。きっと近しいお気持ちになられたのでしょう」
自分に言い聞かせるように、八雲は答えた。

葉巻に火を点けながら青山が呟いた。
「…果たしてそれだけかな…」
「…と、仰いますと?」
八雲が振り返る。

「瑞葉くんは、藍に何かを求めているのかも知れないな」
八雲は端正な眉を顰めた。
青山は穏やかな眼差しの中に真摯な色を秘めながら、八雲を見つめた。
「…彼は、無意識に外の世界との繋がりを持ちたがっているのではないのか?
友達…自由な世界…そして、自由な人生だ」


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