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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
メルセデスをガレージに停め、八雲は屋敷の玄関の扉を開ける。
料理人と掃除婦しかいない屋敷の中はしんと静まり返り、人の気配が全く感じられないほどだ。

壁に歴代の当主の肖像画が飾られている大階段を、優雅な足捌きで駆け上がる。

信州軽井沢…離山の森の奥に建てられたこの別荘は、周りを高い木々に覆われ、陽が傾き始めると廊下は既に薄暗い。
ランプを点けなければ、と思いながら八雲は突き当たり奥…主人の部屋の扉をノックする。
返答を待たずに、扉を押し開ける。

「失礼いたします。瑞葉様、和葉様はご無事に汽車に乗られました」

部屋の奥にいる主人に声をかける。

瑞葉はバルコニーに面した窓辺から、静かに振り返った。
…そのほっそりとした白い脚はしっかりと床を踏み、ゆっくりと八雲に向かって歩き出す。
八雲の目の前に立つと、その熟れた果実のように紅い唇を開いた。
「…八雲、僕は死んだら地獄に落ちるね…。
あんなに優しい弟を騙して…」
高貴なエメラルドの瞳には、深い哀しみが浮かんでいた。

八雲は目の前に佇む禍々しいまでに美しく艶やかに輝く主人を見つめた。
そうして、そっと腕を伸ばし優しく己れの胸元に抱き込んだ。
「…ご案じなさいますな。地獄には私一人がまいります。
全ての罪は私にあります。
…貴方のためならば…例え地獄の業火さえ、私は恐れません」

瑞葉が八雲の胸の中で激しく首を振り、その美しい翠色の双瞳に強い光を宿して、男を見上げた。
「お前だけを地獄に行かせはしない。
…堕ちるなら…一緒だ…」
「…瑞葉様…!」
八雲はその蜂蜜色の美しい髪を愛おしげに梳きあげ、そのまま頭を強く引き寄せ、狂おしく口づけを交わす。

激しい口づけを解くと、瑞葉は濡れた唇を震わせながら掻き口説く。
「…僕だけを置いていかないで…。
連れて行って…地獄の果てまでも…」
「…瑞葉様…!」

…愛おしいひと…。
誰よりも愛おしいひと…。
愛おしくも狂おしく私の心を惑わすひと…。
私の、運命のひと…。

…全ては、十九年前に始まったのだ…。








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