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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
「…夜会の合間に、お貌を拝見しにまいりますよ。
良い子でいらしてくださいね」
漸く瑞葉はほっとしたような笑顔を見せ、頷いた。

「さあ、湯あたりされてしまいます。
もう少し、お身体をお洗いいたしますよ」
八雲は慣れた手つきで瑞葉の下半身に手を伸ばした。

白濁した湯の中で、不意に瑞葉が身体を捩った。
狼狽した様子で、八雲の手を押し戻す。
「い、いいよ…そこは…自分で洗うから…」
八雲は不審に思った。
瑞葉は生まれてからずっと、乳母か八雲に入浴の世話をされてきた。
八雲に、身体のすべてを余す所なく触れられ清められることに、何の羞恥も感じてはいなかった筈だ。
瑞葉は足が不自由だし、幽閉に近いことをされていてもれっきとした伯爵家の子息である。
高貴なひとは入浴の介助をされることは幼い頃から至極当然で、今更羞恥心を覚える必要はないはずなのだ。

「どうされたのですか?瑞葉様…。
いつも八雲がすべて清めて差し上げたではありませんか。
さあ…」
抗う瑞葉を柔らかく押し留め、その鼠蹊部に手を伸ばした。

その瞬間、八雲は息を飲んだ。
…か細い瑞葉の腰の下…まだ幼い像の若茎は、硬く芯を持ち勃ち上がっていたのだ…。

「…いや…だ…。触らないで…」
瑞葉は貌を背けて、唇を噛み締めていた。
ほっそりとした華奢なうなじは、薄桃色に染まっている。

震える声が、浴室に響く。
「…僕…最近、おかしいんだ…。八雲が僕に触れると…そこが硬くなる…。それから…八雲の声を聞いたり、八雲のことを考えると、身体中が熱くなって…そこはもっと熱くなる…触って欲しくて仕方なくなる…。
…それから…口に出せないくらいに、いやらしいことを考えてしまう…」
「…瑞葉様…」
胸が熱くなり、言葉に詰まる。
濡れた蜂蜜色の髪を揺らし、瑞葉が振り返る。
透明な美しいエメラルドの瞳は、涙に溢れていた。
「…僕の身体はおかしいのかな…?これは…病気?
…どうしよう…八雲…」
思わず、その華奢な美しい身体を抱きすくめた。
「病気ではございません。瑞葉様。
…瑞葉様は、大人になるお身体のご準備が始まったのですよ」

八雲の身体も感動に打ち震える。
…瑞葉様は…私と同じお気持ちでいらしたのだ…!
その奇跡のようなできごとに、八雲は溢れ出る歓喜に翻弄される。
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