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エメラルドの鎮魂歌
第4章 美しき森の虜囚
「…僕は…八雲以外に心惹かれたことはない…!絶対に…!」
エメラルドの瞳が、珍しく怒ったように強い光を輝かせた。

…素直な方だ…。
八雲は内心可笑しくなる。
瑞葉の一途な心を分かっている癖に、ついしつこく尋問するように尋ねてしまう。
「ではなぜ、あんなに楽しそうにされていたのですか?」

暫く言い淀んだのちに、瑞葉は少し恥じらうように口を開いた。
「…八雲に…どうやったら飽きられないかな…て考えていたんだ…」
その言葉に、八雲は思わず目を見開いた。
「…え?」
「青山様は、話題が豊富な方だったから…あんな風に僕もお喋りが上手くなれたら八雲を楽しませてあげられるのに…て。
…僕は無知だし、話も下手だし…八雲は僕と一緒にいても退屈でしょう…。
だから青山様を見習おうと思って一生懸命お話していたんだ。
…僕には何の魅力もないから…。
いつまでお前が僕を好きでいてくれるのかな…て…」

「瑞葉様!」
押し倒した瑞葉を、強く抱きしめる。
愛おしさが…いじらしさが泉のように溢れ出で、胸が締め付けられた。
こんなにも無垢なひとを、少しでも虐めたい欲求に駆られた自分を猛省する。
「…貴方は…!なんと可愛らしい方なのですか…!」
「…八雲…」

大きな美しい翠の瞳で瞬きもせずに八雲を見つめる瑞葉に、赦しを乞うように優しく口づけを繰り返す。
瑞葉の身体から緊張が解ける。
「…八雲…すき…」
感情を素直に表現できるようになったのも軽井沢に移り住んでからだった。
…瑞葉にはもはや八雲しか残されて居ないからだ。
この男が世界のすべてだと、八雲にその身体と心で知らしめられ、甘い束縛を受け入れるようになったからだ。
「…貴方といて詰まらないと思ったことなど一度もありませんよ」
長く美しい蜂蜜色の髪を梳き上げ、口づけを落とす。
「…貴方を見るたびに私の胸は高鳴り、狂おしく締め付けられます。
…毎日…毎日…貴方に恋をする…」
「…八雲…嬉しい…」
潤んだエメラルドの瞳は、神秘的な湖のようだ。
その瞳に映る自分に語りかけるように微笑む。
「…愛しています。瑞葉様。貴方は私のすべてだ。
…この美しく愛おしい貴方を…私は死ぬまで離さない…」
瑞葉の薔薇色の唇が微笑んだ。
「…僕もだよ…八雲」

…そして、甘く囁いた。
「…僕を抱いて…お前の好きにして…」



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