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第9章 欲しがりや

 一気にどんよりとした空気になった。

 早く流れを変えないと…

 居心地悪ぃ!

「ハア」と溜息をつき、グイッと生を喉元に注ぐ。

 酔わないと……早く酔っちまいたい。

 ああ、マジ勘弁だ。

 何故そうなる。

 元々、目の前のこいつは女にだらしないゲス野郎じゃないか!

 俺が仮に弁護士だったら、こいつに泣かされた女達を集めて被害者の会を発足するところだ。

 勝訴間違い無し

 ああ、そういう道もあったのか!

 なんて脳内妄想で苛立つ気持ちを和らげようとした。

 所詮、他人事なんだと自分言い聞かせる。

 落ち着け、俺!!



「俺が熱くなる必要ないよな」

「歩……」

「人の恋愛の自慢話と別れ話に付き合うのは女子に限る。
男は黙って酒を飲む!」

「俺は歩のそういうとこが好きなんだ。
ダチだったらさ、俺みたいな女たらし、本当は嫌だよな」

「好きとか気持ち悪ぃ!
嫌な奴だけど、光輝みたいな考え方もあるし、肯定はしないが否定も出来ない。
人様の恋愛をあーだ、こーだいうほど俺が恋愛のスペシャリストでもない」

「カッコイイな、歩のそういうとこ」

「バーカ」

 完全に嫌な奴なのに、とことん嫌になれない性質を持ったお前の方が……
俺は羨ましいと心底思うよ…

 
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