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第10章 パッション


「分かったよ、歩。
和香奈にはちゃんと伝える。
俺が全て悪い。
だから卑怯な手段は使わない。
じゃなきゃ、俺のパッションを貫けなくなる。
和香奈と別れるのは、将来の事まで考えてやれなかったからだ。
それが俺の本心。
なあ、歩……勘違いだったらごめん。
ひょっとして、和香奈の事好きだった?」

「な、何言ってんだよ!
和香奈はお前が付き合った女の中で一番マトモで良い奴だった。
それだけだ!」

「ならいいんだ。
歩まで傷つけていたらって思ったら悪いじゃん」

「いらん心配すんな!」

 本当にそれだけだった。
一緒に遊んだり話していて飽きない、それに気も遣わずに楽しく過ごせる女だとは思う。
冗談交じりに『友達紹介しろよ!』と言った事もあった。
紹介された女は……好みじゃなく、断る時は和香奈に骨を折って貰った。
女特有の『可愛くて良い子だから』は自分より落ちる子が多い。
和香奈に悪気ないのだろうが、紹介された子はギャルそのものって感じで、お互い気まずい雰囲気になるくらい合わなかった。
困り顔の和香奈に『もうー!歩の好きなタイプはどんな子なのよ〜』と聞かれて、初めて気づいた事がある。
俺は余りキャピキャピしている感じの人は苦手だ。
出来れば大人の色気を感じさせながら、尚且つ清楚な女(ひと)が好き。
いわゆる熟女系がもろストライクゾーン。
正直、余り同世代の女性にときめいた事もなく、『頼んでおいてごめんなさい』と謝るしかなかった。

 敢えて好みを贅沢に言わせて貰えば、石田ゆり子のような女が好きと言ったらぶっ飛ばされただろうな…

 己を知らず、高望みごめんなさいと心で謝罪

 人が恋に落ちる瞬間なんて……風邪をひくようなもんなのかもな?
それはある日突然で自分が予期出来ぬうちにかかってしまう病みたいなもんなんだと俺は思うよ…。
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