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第17章 世界一の不器用者


「歩、今大丈夫か?あっ、あ……今どこらへん?
そうなのか。ああ、俺達ももう直ぐ家に着く。
夏帆がさ、道間違えて渋滞にハマってな……。ナビつけてるのに道に迷うって有り得ないだろ(笑)
まあ、あと30分くらいかな」


 後ろの後部座席で歩と電話のやり取りをする聡。
昼食に焼蛤を食べて昼酒を煽り、酔っ払い親父となって私に運転させ、後部座席で寛いでいる。
お酒が好きな人というのは知っていたが、妻が方向音痴で車の運転が下手だと知っているのなら、なぜその時ばかりの酒が我慢出来ない?
私は酒癖の悪い聡を見ながら、時折宿敵でもあろう元妻の涼子さんに同情してしまう事がある。
酒癖が悪くて亭主関白な男なんて、煩い蝿が耳元から離れずにまとわりついてくるのと同じ。
私はこの5年の間、沸々と湧き出す怒りを抑えながら生きてきた。
その倍の結婚生活を送った元妻の涼子。
若い時の結婚ならば、尚更逃げたくなっただろうに……


 煩い蝿は後部座席で息子との会話を楽しんでいた。
私はこういう時は放っておく事にしている。
変に関わり、面倒臭くなると喧嘩になるからだ!

 いつか蠅を叩きのめすとチャンスを伺いながら……
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