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咲の旅物語
第4章 聖獣のパラダイス

朝靄がかかる広大な湖で一頭の馬が水を飲んでいた。

その体躯は引き締まり、しなやかな筋肉に覆われ、朝日を浴びて銀に輝く見事な鬣。

背には純白の翼をもち、頭には黄金の角。

伝説の聖獣ペガサスであった。

ドサッ

何かが落ちた音がして、ペガサスが顔を上げる。

見ると今にも消え行く魔方陣の中で人が倒れていた。

近づいてみると、女のようだ。
腰まである黒髪が彼女の陶器の様に滑らかな白い肌を滑り落ちる。

その容姿は、聖獣でも息を飲むほどに美しく、無駄な肉がないしなやかな長い手足は無造作に投げ出されていた。

ペガサスは前足で優しく彼女を揺さぶった。

いくらここが温暖な気候とはいっても、今は冬である。

こんなところに置いてはおけない。

「おい。娘」

「ぅうん…」

もう一度揺さぶってみる。

「おい。大丈夫か?」

「タチバナ……こんちくしょぅうぅぅぅ!!」

突然女が叫びながら起き上がった。

「おわぁ!!」

声に気付いたのか、女が此方をみた。

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