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約束 ~禁断の恋人~
第3章 倒錯
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カイが、テンポ良く昼食用の野菜を刻んでいる。
この十日間で、彼の料理のレパートリーは驚くほどに増えた。
新しい料理の本を、何冊も買い与えた成果だろう。
Dr.小早川は一日置きにパソコンへメールを送ってくるが、まだ何も気付いていない様子。
僕は不在を装い、返信はしなかった。
父親からも電話はあったが、脳死状態の患者に必要な薬剤を送るよう頼んだから、疑う様子も無い。
外来は、僕の患者を他の医師で分担しているそうだ。
余計なものは排除して、何も聞こえない振り。
僕の身近だけは、この一年何も変わらない。
このマンションの中の穏便な生活は、海と二人だけの世界にいるよう。
僕は海といられればいい。それ以上は、何も望んでいない。
「海……」
野菜を刻み終え、包丁を洗っている彼の傍へ行った。
「何?」
「しよう……」
僕の言葉に頷くと、彼はすぐ包丁を置いて髪を撫でてくれる。
僕が、そうされるのが好きだと知っているから。僕が、それを教えたから。
彼の部屋へ入ると、すぐに深いキスをされる。
舌を絡めながらシャツのボタンを外され、僕は彼のボタンを外す。
いつもの手順通りに全裸になってから、ベッドに場所を移した。
強く抱きしめられると、彼の逞しさに全てを忘れられる。
「海っ、あっ……」
「トモ……」
耳元での囁き。
首筋を辿った舌が胸へ降り、乳首を掠めるように愛撫される。
僕がどうされれば気持ち悦いのか、それも僕が教えた。
彼は学習としてセックスをしているのかもしれない。僕の、Dr.の言う通りに、学習しているのだろう。
それでも構わなかった。
ベッドにいる時は、僕だけの海。僕が愛する彼でいてくれる。
セックスをするようになってから、僕の胸には無数の赤黒い跡。
消えかけても、すぐに次が残される。
「海っ、あっ……。あ、んっ」
激しかった海とは違う、彼の優しい愛撫。その舌の動きに、僕はシーツを掴んだ。