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約束 ~禁断の恋人~
第5章 変化
父親が訪ねて来た日から五日が過ぎても、僕とフィーアの生活は変わらない。
フィーアには出来る限り人間らしく接しながらも、それをカモフラージュするように、毎日父親のパソコンにもフィーアの学習記録を送っている。
父親が来た日にフィーアが言ったこと。
『Dr.トモは綺麗』
あれ以来、彼は口にしたことが無い。
色々な画像をプリントアウトしてテストのようなこともしたが、フィーアの感想は無かった。
あれは、何かインターネットの影響だったのだろうか。あの時彼は、ネットを見ていたと言っていた。
でも、学習は長い目で見なければ結果は出ない。
それについては、これからもテストを続けていくつもりだ。
夕食後にリビングで学習記録をまとめていた時、フィーアのいるキッチンから何かが割れる音がした。
「どうしたの? 大丈夫?」
声をかけてから、夕食の後片付けをしている傍へ行ってみる。
割れたのは何も盛られていない大きな皿で、キッチンの床には破片が散らばっていた。
「ごめん。すぐ片付けるから……」
隅に置いてあるキッチン用の掃除機を出すフィーアを見ながら、僕はその場にしゃがんだ。
「大きい破片は、手で拾った方がいいよ」
言いながら大きな破片へ手を伸ばし、軽い痛みに手を引っ込める。
「あ……」
見ると、指先で血が滲んでいた。
手先の器用さに自信はあったが、それはDr.としての時だけ。普段気を抜いている僕は、普通の人以下だろう。
「どうした?」
掃除機を持って来たフィーアが、僕の指先を見つめる。
「切った? 血が、出てる……」
「平気だよ。これくらい」
いつも綺麗にしてあるから、特に細菌のある場所でもない。これくらいの傷なら、消毒も兼ねた液体絆創膏だけでいいだろう。
そう思って立ち上がろうとした時彼に手首を掴まれ、驚いて動きを止めた。
「フィーア? どうしたの?」
彼は腕を掴んだまま、僕の指先をじっと見つめている。
「痛い?」
「え? あ、ちょっとだけ。大したことないよ」