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結婚式前夜
第2章 最終章 雫(しずく)とぼく
少しすねたような声だ。
彼女はこちらを見ずに、うつむいたままだ。
ぼくは彼女の隣に座り、小さな華奢な肩を抱いた。
麗子さんを相手にしたあとに雫に振れると、雫の身体が余計小さく感じられる。
それに身体の弾力も……
若さが違うのだ。
「ごめん、ごめん、遅くなって」
ぼくは悟られないように平静を装った。
「また、麗子さんのところにいたの?」
やはり、わかっていた。
「あ、う、うん……」
ママと麗子さんのことは、既に彼女に全部話している。
もちろん、明日結婚式を挙げることも。
「麗子さんとしてきたの……?」
「う、うん……」
ぼくは戸惑いながらも、正直に返事をした。
彼女には、麗子さんの性癖も話している。
彼女には、隠し事をしたくなかったのだ。
「いっぱいされた?」
「うるさい!」
ぼくは彼女の執拗な質問と、したくないことをしてきたのに、それを彼女に咎められたようで、苛立った。
彼女はうつむいたまま、黙ってしまった。
ぼくは彼女の前に仁王立ちになった。
「言っただろう? 麗子さんとのことは“仕事”なんだって……」
ぼくは彼女の前にしゃがみこんだ。
手で彼女の顎を持ち上げ前を向かせ、見つめた。
「わかるだろう?」
「いやっ……」
彼女は拒絶の声を上げた。
「そのお陰で、ぼくも君もこうやって何不自由なく、暮らしていけるんだ」
ぼくはそう言うと、彼女の肩まである黒髪を撫でた。
彼女を最初にこの部屋に迎えたときは、金髪だった。
ぼくが、黒髪の方が似合う、と言って黒に染め替えたのだ。
ぼくが染めてあげたのだ。
彼女は黙ってそれに従った。
「ぼくが愛しているのは、君だけだよ……」
「うそっ」
「ほんとだよ……」
「うそっ」
ぼくが手を離すと、彼女はまたうつむいた。
ぼくはまた彼女の隣に座った。
彼女の肩に手を回した。
回した手を彼女の胸元に差し入れた。
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