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大人遊び
第29章 choice A 遭遇 side 悠
俺が何かを言う前に先に文が口を開いた。

「啓介さん、違うの。大丈夫…少しだけ話したいから、ごめん、先に戻ってて貰ってもいいかな?」

彼女のその一言で俺が誰なのか、そいつは察したようだった。

「わかった。文、……………な?」

元カレが目の前にいるのも関係なしに彼女をギュッと抱き締めて、耳許で何かを伝えたそいつは俺にペコッと頭を下げてその場から去っていった。



職場の知人を介して知り合って、それなりに長く付き合った俺とたまたま出会って一夜を共にした相手。

文がそいつが気になるって言った時、そんな男、信頼出来るのかよってこっちが心配になるくらいだった。

結婚適齢期の文の年齢を考えても、俺のとこに戻ってきてくれる可能性もあるんじゃないかって思ってた。

だけど、いざそいつと会ってみて、ようやく府に落ちた。

あいつ…俺から見てもわかるくらい、すげぇ文が好きじゃん、笑

俺の前であんなことしやがって、その場を取り繕うための謝罪もない、つまり返す気はないって事か。

耳許で何かを言われた文は嬉しそうに小さく微笑んだ。

……負けたわ。

俺はいつも必要な時に言葉が足りてなかった。


「悠くん…私…」


心を決めたように俺と向き合う彼女は、一転して、今にもこぼれそうな涙を必死に堪えているように見えた。


「俺はもう文の特別にはなれない?」


答えはわかってる。


「…うん、ごめんなさい。」


「渡したくねぇよ…だけど、好きな女がこんな泣きそうな顔ばっかしてんのはもっとヤダわ。あいつ、さっきのやつ、なんて言うの?」

「…名前?都築さん。」

「俺がこんな事言うの変だけど…都築さんにさ、幸せにしないと、ぶっ飛ばすって言ってたって伝えてよ。俺は、泣かせてばっかだったから。」

「そんなことないよ…ありがとう。」

「文、お前の家に行って、お前の笑顔見るだけで、俺はいつも癒されてた。今迄、ありがとな。もう戻らないとだから行くわ。」

そうして俺たちの恋は終わった。
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