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わがままな氷上の貴公子
第3章 心配
はたから見れば、カップルに見えるだろうな。美女と野獣って感じだけど。
潤のいつものニコニコが、ニヤニヤに見える。
気にしているわけじゃなくても、ヤツの図体が嫌でも目に入ってしまう。
「悠斗くん!」
二周目に二人の傍を通ろうとした時、塔子の声に速度を緩めた。
「代わって。ちょっと滑ってくるから」
拒否する間もなく、塔子が潤をオレの方へ滑らせてくる。
「よろしくね」
塔子は勢いをつけて行ってしまう。
よろけた潤にしがみつかれそうになったから、仕方なく両手を出した。
「ほらっ!」
「悠ちゃんっ」
オレの手を掴んで嬉しそうに言われ、溜息をつく。
無人のリンクでならまだしも、こんなに人がいる所で男同士で手を繋いでるなんて……。
「一緒に滑れて、嬉しいなあ」
「一人で滑れば?」
「そんなあ……」
情けない声を出すこんなヤツには、金属製の補助器具でも与えておけばいいんだ。
お前のガタイを支えられるか、知らないけどな。
溜息をついた時、今日は潤の練習だというのを思い出した。
「足、ちゃんと交互に出せよ。体重前にかけて。下ばっか見るなっ!」
「うん……」
潤の真剣な表情を見るのは、オレの部屋でのセックス以来。
いつもボーっとしてるか、ニコニコしてるかだもんな……。
あの時の掠れた声を思い出して、頭を振った。
「悠ちゃん?」
顔を覗き込まれて、焦ってしまう。
「また、真ん中に置いてきてやろうか?」
「悠ちゃーん」
冗談だから、そんな情けない顔するなよ。
指導しながら滑っているうちに、何とか形にはなってきた。でも身長差があるから、上げている腕が疲れてくる。
そろそろ千絵にでも押し付けようと思ってリンクを見渡した瞬間、潤がバランスを崩して手を放す。
「うわっ」
自分でも、情けない声だと思った。潤がジタバタしている時に逃げればよかったのに……。
慌てた潤に肩を掴まれたオレは、そのまま潤の下敷きになってしまった。
「ゆっ、悠ちゃん! 大丈夫?」
だったら早くどけって!
「痛っ……」
潤が横にどいて立ち上がろうとしたら、右足首に痛みを感じた。