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SS作品集
第30章 計画
バス停が空いている。
通勤ラッシュの時間なのに、ラッキーだと思った。
それでも、乗り込むと座れるほどではない。
僕はごく普通の会社員。
会社も給料も平均的。身長も体型も、ごく平均的。顔も、よくそう言われる。
子供の頃からずっとそう。
成績も運動も平均的。
落第点を取らないだけいいかと思い、今まで過ごしてきた。
バスを降りて駅へ行くと、ホームもいつもより人が少ない。
それでも、やはり座れるほどではなかった。
会社に着いても、昼にコンビニへ買い物に行っても、人はいつもより少ない。
休日は妻と息子二人と一緒に、テーマパークへ行った。
僕達家族はここが大好きで、以前からよく来る。
いつもは3時間以上待つアトラクションに、2時間半ほどで載れた。
どのアトラクションも、以前より列は短め。
そんな様子を眺めながら、僕の中には不安しかなかった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一ヶ月が過ぎ、僕はまた会社へと行く。
バス停も駅も、一ヶ月に比べると人はまた減っていた。
会社もコンビニも同じ。
テーマパークでは、元々3時間以上待つアトラクションに、2時間ほどで載れた。
どのアトラクションも、以前よりさらに列は短め。
僕は益々不安になった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一年が経つと、人は半分に減っていた。
会社に着いても、同僚は半分。
病気でも、有休でもない。
テーマパークでは、元々3時間以上待つアトラクションに、1時間半ほどで載れた。
どのアトラクションも、以前に比べると列は半分。
西暦2000年代前半には“少子化”という現象が起こり、人類が減少傾向にあったそうだ。
そのため、先進国は色々な対策を取った。
子供が生まれればそれに応じた広い家を安価で借りられたり、大学進学までを無償化したり。
20歳まで医療費は無料。子供連れのレジャーなら割引制度も設けた。
三人以上子供を持てば、多額の報奨金が出るようにも。
そうしているうちに今度は子供が増えすぎ、西暦3000年代半ばには、世界人口が150億人に。日本だけでも3億人に膨れ上がった。