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SS作品集
第31章 迷信

何とか作業は終わり、段ボール箱はまだ積まれているが、必要なものだけ出しておいた。
引っ越しの疲れもあり、その晩は新しいベッドでぐっすりと眠った。
翌日、引っ越しの疲れから、30分ほど寝坊してしまった。
土日に引っ越しをすれば良かったが、平日の方が料金が安い。だから今日は出勤しなければならない。
段ボール箱を積んだままでも、縁起は悪くないはず。
散らかった部屋は良くないというが、ゴミはまとめて部屋の隅に置き、段ボール箱もきちんと積んである。
だからこれは、散らかっているのとは違う。
毎日少しずつと、週末にまとめてやる予定だ。
遅刻ギリギリだが、昨夜割れたものも含め、全ての爪を切った。もう血も止まっていたから、絆創膏も必要ない。
朝食を摂っている時間がなかった。
駅までの道にコンビニがあるのを調べておいたから、そこで何か買って会社で食べよう。朝は上司がいない時が多いから、同僚なら笑って許してくれる。
急いでマンションを出て、通り沿いのコンビニでおにぎりや缶コーヒーを買った。
会計は444円。
4が並ぶなんて、縁起が悪い。
レジ横のガムを足し、何とかそれを免れた。
朝から。それも引っ越しての初日に、縁起が悪いことに遭いたくない。
コンビニを出て、駅までの道を急ぐ。
住宅街の奥で、マンションから駅までは徒歩15分かかるが、今の僕の給料で住める範囲だから仕方ない。
ふと、足を止めた。
黒猫だ。
黒猫に前を横切られてしまった。
昨夜も最初は北枕にベッドを設置され、口笛まで吹かれ、今朝は444円。
おまけに黒猫に横切られるなんて。
もう駄目だ。
このまま外出していると、絶対に悪いことが起こる。
僕は急いでマンションへ戻り、会社へ電話した。
体調が悪いから休むと。
今日は一日、ベッドで過ごそう。これ以上、何も起こらないように。
おわり
迷信。どこまで信じますか?

