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SS作品集
第32章  ハコニワ



 中学生になった彼女は、誕生日に念願だった“ハコニワセット”を買ってもらった。
 クラスでは半分くらいの子が持っていて、休み時間にその話に興じる。
 明日からは自分も仲間に入れると、ワクワクとしていた。
 ハコニハは30cm×30cmの大きさで、透明なカバーをはめると高さは30cm。彼女は部屋の隅に置いて育成を始める。
 付属の土や海水をセットし、後は待つだけ。
 一週間ほどは退屈だが、その後は楽しいと友達から聞いていた。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 一週間が経つと、海水の中に動くものが見える。土の部分には緑も。
 スポイトで海水を吸って顕微鏡で見ると、生きた魚。
 古代魚と言われるものだと辞典で知ったが、自分の作った物に生命が誕生したのは嬉しかった。
 地球育成用の“ハコニハセット”。
 地球誕生からの歴史も知れ、勉強になると両親も持つのを許してくれた。
 実際の一日が、ハコニハの中では約一年。
 一週間。たったそれだけで生物が生まれたのは、最初から海水に卵が仕込まれていたせい。
 そこまでがあまり長いと、消費者が退屈になってしまう。それを考えた売り手が、改良を重ねていた。
 生物が早く進化する仕組みも施されている。それは企業秘密だが、海水や土に特別な栄養が混ぜてあるらしい。
 一ヶ月もすると彼女のハコニハには緑が溢れ、恐竜のような生物まで。あくまでも進化の過程を見るだけで、実際の世紀には関係していない。
 一年が経つと、人類と思しきものも生活し出す。
 その間には、火山の噴火や氷河期。カバーのお蔭で部屋に影響はなかったが、彼女は小さな生物達の運命に何度も涙した。
 学校の友達の中には育成に飽き、大津波や大地震、大噴火を一気に起こしてリセットしてしまった者も多い。
 仲間内でのブームが去っても、彼女は飽きることなく育成を続けている。
 彼女が高校生になり大学生になった時、ハコニワの中の人類は文明を持ち始めていた。
 工業での汚染が始まり、空は光化学スモッグでどんよりとしている。



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