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SS作品集
第32章 ハコニワ

それも、文明の発展には仕方のないこと。
そう思い、彼女は見守ることにした。
後になるほど、目に見える進化は遅く感じる。
以前は生物の進化や、人類が道具を使い始めるなど面白かった。
今は、生活様式が変化していくだけ。
それでも彼女は、この世界の創造者。
大学生の彼女に経験は無いが、自分の子供のようでリセットなどする気にはなれない。
そして、もっと文明が進んだ未来の文明が見たいと思っていた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
青年は少し悩んでいた。
“ハコニワセット”が流行ったのは20年前。
社会人になった青年は、観察をする暇もない。
「仕方ないか……」
親戚の子供が、“ハコニワセット”を欲しがっていた。でもやるなら、最初からじゃないと面白くないだろう。
そう思い、青年は色々な災害のボタンを押した。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
彼女は、群衆とともに逃げまどっていた。
大地震で殆どの建物が崩壊し、海沿いでは大津波。山は一斉に大噴火を起こし、全国で数か所しかやっていないラジオニュースでは、壊滅的な被害を伝えるだけ。
彼女は“ハコニワセット”のことも考える余裕なく、安全な所を探すしかなかった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
青年はリセットした“ハコニワセット”を親戚の子供に渡した。
壊れた建物などは掃除して捨て、真っ新(さら)の海と大地。
青年のハコニワの中では文明が進化し、人々は“ハコニワセット”を持つようになっていた。
その中の文明と、“ハコニワセット”。
もしかしたらその“ハコニワセット”の中の文明もまた、“ハコニワセット”を持っていたかもしれない。
親戚の子供は、嬉しそうに創造を始めている。
いつまで興味が持つか分からないが、本人に任せるしかないと思った。
おわり
“ハコニワセット”。最後まで責任持てますか……?

