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第33章 　結婚

　人混みの中、急に声をかけられた。
　よく見ると、知り合いだった男性。
「君！　久し振りだね」
「まぁ。お久し振りです」
　私達は駅前で挨拶を交わしてから少し話し、映画館へと歩き出した。
　たまたま観に来た映画が同じだったから。
　彼は、大学時代の同期生。
　同じテニスサークルで、仲がいいグループだった。
　ここ数年連絡も取っていなくて、本当に久し振り。
　その日すぐに意気投合して、来週末の約束をした。
　それからは毎週末二人で出かけるのが続き、約一年が経つ。
　お酒を呑みに行くこともある。
　居酒屋で大学時代の話をするのが主で、彼に会うと若返る感じも楽しかった。



　でもここ暫くはお互いの仕事が忙しくて、今日会うのは一ヶ月振り。
　メールで話してはいたけど、やっぱり会って話す方がいい。
　今日観る映画は、彼が選んだもの。
　観るものは、いつも大体恋愛映画。
　趣味が同じだから、話も合う。
　映画の感想を語り合ったり、どんな恋愛が理想か話し合ったりもする。
　恋愛から話が進み、どんな結婚生活がしたいか。
　住みたい家や子供の数。それも彼とピッタリ合っていた。
　彼となら理想の人生が送れる。
　そう考えるほどだった。



　二年が過ぎても、私達の関係は変わらない。
　でも一つだけ変わったのは、お互いが結婚について考えるようになったこと。
　会った時も結婚についての話題が多くなったし、お互いに調べた結婚式場の話にもなる。
　時には結婚式場のパンフレットや関連雑誌を一緒に見ることも。
　披露宴の内容やゲストへの食事。お互いの衣装についても毎回話し合った。