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SS作品集
第36章 季節
「寒い……」
目覚めてすぐ、毛布だけで眠ってしまったことに後悔した。その上、半袖のTシャツ。
何とか起きて、すぐにエアコンを暖房で点けた。
昨日は暖かかったのに。
そのせいもあり、昨日は大学の仲間と呑みに出た。
名物教授の話で盛り上がり、酒も進み、やっとマンションへ帰って来た感じだ。
今日は土曜で、大学は休みだから問題ない。
しかし、衣替えをするのを忘れていた。
つい後回しになり、追い詰められないとやらないタイプ。
俺は正にそれ。
エアコンがあるから不自由はしないが、この寒さでは外出も出来ない。
軽い朝食を摂りながら、テレビを観る。
今日は今季一番の寒さで、北の方では大雪だというニュース。
東京でも寒いはずだ。
俺は急いで朝食を終え、クローゼットを開けた。
衣類の殆どは、プラスチックのケースに入っている。
奥には冬物。手前には夏物。ハンガーには中間服がハンガーで掛けてある。
クリーニングに出すほど高価な物はないから、自分で洗濯していた。
衣替えと言っても、プラスチックケースを入れ替えるだけ。
こうしておくと友達から聞き、実行している。
ふと窓の外を見ると、雪がチラついてきた。
寒いはずだ。
急いで長袖のシャツとニットに着替え、暖房を弱めた。
さっきまで半袖Tシャツだったから、温度の設定は高め。そのままだと、電気代が勿体ない。大学生の俺の懐に響く。
朝食を作った時見たが、食材がもう無かった。
雪が積もる前に、近くのスーパーへ買い出しに行くことに決める。
ニット帽とマフラー、手袋をして外へ出ると、雪は薄っすらと積もり始めていた。
少し歩くと、近所の顔見知りの年配の主婦に出会う。
「今日は寒いわねぇ」
主婦はもこもこの格好をして、スーパーの袋を提げていた。