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SS作品集
第36章  季節


「どうしたもんかしらねぇ。まぁ、私達には、もう何も出来ないけどねぇ」
「そうですね」
 軽い挨拶を交わしてから別れ、俺はスーパーへ向かう。
 雪が積もり、動きが遅くなってきた。
 こんなことになって、五十年ほど経つと聞いている。
 この国に四季があるのは変わらない。でもその間隔が、異様に短くなったそうだ。
 以前は約三ヶ月で季節が変わり、一年で春夏秋冬を繰り返す。
 僕はそんなことを知らない。
 季節の感覚は短く、一週間前は猛暑だった。その前は、心地好い秋と呼ばれる季節。
 そんなことを、一ヶ月の間で繰り返すことが当たり前になっている。
 便利になった生活がそんなことを引き起こしたと言うが、知る限り、昔の不自由な生活なんてしたくない。
 年配で昔を知っている者は嘆くが、彼らだって昔の生活に戻そうとはしないんだから。
 自由に電気を使ったり、車に乗ったりして、二酸化炭素を放出する。
 今更、電気などの無い生活になんて戻れるはずがない。
 季節の間隔が短い今、色々なレジャーを楽しめる。
 天気予報は正確で、来週は春だと今朝のテレビで観た。
 何となく予想はしていて、春には友達数人とピクニックに行く予定だ。その翌週辺りは夏になるだろうから、海水浴の予定も立てている。
 面倒くさいのは、衣替えくらいだ。
 生まれた時からそんな気候に慣れている俺達は、季節を充分に楽しんでいる。
 僕は自動歩行器を一度止め、屋根に積もった雪を払った。
 これはもう旧式だから、そろそろ最新型に買い替えた方がいいだろう。
 最新式はより二酸化炭素を排出するらしいが、これ以上何も変わりようがない。
 俺はスーパーへ急いだ。


 終わり


 これは遠い未来でしょうか。それとも……。



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