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SS作品集
第37章 テレビ
やった!
オーディションに受かった!
僕は今年24歳になる。
中学生の頃から俳優志望で、高校生の時モデルとして芸能事務所に所属することが出来た。
それから七年。
学生時代、月に一度くらい仕事はあったが、ネット広告やテレビCMの誰でもいい役。
高校を卒業してからは、アルバイトをしながらテレビドラマのちょい役などで生活していた。
今回受かったのは、単発だがテレビドラマの主演。それも、ゴールデンと言われる時間帯の放送。
1000人くらいの中から、主演に選ばれた。
オーディションには有名な俳優も来ていたから半ば諦めていたが、僕なりに精一杯頑張った結果。
運もある。
その主役の青年が、僕の雰囲気に合っているとは思っていた。
格好いい有名な俳優よりも、素朴で段々と垢抜けていく青年。
そのドラマ一本で裕福になるわけじゃないが、目指していた道への第一歩だ。金の問題じゃない。
それにドラマの番宣のために、その局の色々な番組にゲスト出演する。
僕が俳優として生き残れるか、試される時。
それでもまだ、完全にアルバイトを辞める勇気はない。
店長に相談すると、喜んでシフトを大幅に減らしてくれた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
相手役は有名女優。
彼女の人気で、ドラマを観てくれる人も多いだろう。そんな中で、僕も懸命に撮影に臨んだ。
ちょい役では出ていたが、主演となると分からないことだらけ。
相手役もスタッフも監督も優しく、色々と指導を受けながら撮影が進んでいく。
少し前まで憧れでしかなかった有名女優が、休憩時間に普通に話しかけてくる。
脇役もそう。
名脇役と言われる俳優とも雑談などして、撮影は、初めてにしてはスムーズに進んだ。
その間に、ポスターの写真や告知の映像も撮る。
何だか有名俳優になったような気分だったが、僕はひとつひとつを丁寧に進め、決して自惚れることはなかった。