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SS作品集
第37章  テレビ


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「き、君のことが、す、好きなんだ。僕と、ずっと、い、一緒に、いて欲しい」
「ありがとう……」
 有名女優を抱きしめてのラストシーン。
 通常ドラマというのは順不同に撮っていくものだが、今回は僕のためにストーリー順にしてくれた。
「オールアップです! お疲れ様でした!」
 スタッフの声が飛び、有名女優と並んで大きな花束を受け取る。
 達成感から来る感動で、僕は涙を堪えた。


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 ドラマが放送された後、僕はまたアルバイトをメインにしている。
 視聴率は5.4%。
 ほんの少しだが、ネットでは僕の演技が酷いと書き込まれていた。
 それほどNGも出していない。カットがかかるたび、監督は何も言わなかったのに。
 思い切って、監督へ電話した。
「ゴールデンなのに5.4%なんて、すみません……」
『いいんだよ。君の演技が下手でも。有名女優と名脇役が出てれば、観たいやつは観るだろ?』
 僕は何も言えなくなってしまう。
『大体。このご時世、5.4%あればいいだろ? この後、君に仕事が来るかは、知らないけどね。じゃ』
 監督に通話を切られ、スマホを置いた。
 そうだ。
 テレビドラマ一本で喜んでいる場合じゃないんだ。
 今はネットドラマの方が人気がある。それに、有料チャンネルも200以上に増えた。
 ネットゲームも盛り上がり、テレビを観る者自体が減っている。
 そんな中5.4%の人が観たかったのは、有名女優と名脇役だろう。
 僕は台本上の主演なだけで、主役は他の人達だった。
 下手な演技を晒してしまった今、もう俳優としての仕事は無いだろう。
 厨房で皿を洗いながら、僕は溜息をついた。


 終わり


 今後の彼の運命は……?


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