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SS作品集
第6章 小さなラジオ
その頃の僕には、2週間もあれば充分。希望の高校にトップの成績で合格。その後も勉強を続け、高校では常にトップを争う成績で国立大学の工学部に合格した。
試験前になると、ラジオは試験内容について話し始める。
どんな仕掛けになっているのだろう。原動力はなんだろう。
僕はこの春大学院へと進んだ。専門は勿論電子工学。
今の僕に試験は無いから、ラジオは話さない状態のまま。ただボタンを押すとノイズはハッキリと聞こえる。原動力切れではなさそうだった。
いくら研究しても、仕組みは分からない。かといって、分解してみる勇気も無かった。もし下手に分解して壊してしまうのが怖い。
たまに点けてみるラジオはノイズだけだが、僕は研究を続けている。まだ先だが、就職試験や昇格試験があるからラジオは手放せない。
この先結婚して子供が産まれたら、使わせてみるのもいいだろう。
だが、中2の時にこれをくれた少年は何者だったのだろうか。
研究者として突飛すぎるが、彼が遥か未来から来た者だとしたら納得出来る。
あなたは、学生時代このラジオが欲しかったですか?
もし手に入れていたら、僕のように勉強を続けられましたか?
了
彼の問いに、どう答えますか?
そして、ラジオを渡した少年の目的とは……。